公正証書遺言のポイント(2011年10月25日)
2011年10月25日
2011年10月25日
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○○さん、こんにちは。
税理士の落合孝裕です。いつもメールマガジンをお読みいただき、
ありがとうございます。
寒くなりかけたと思ったら、
また暖かくなりましたね。
土曜日にある飲み会に参加したら、
若い人は半そでのTシャツ1枚でした(笑)
さて今日は、遺言書を書くときの注意点です。
遺言書は、生前にだれにどの財産を渡すか決めるものです。
「自分が死んだあとのことは考えたくないなぁ」
以前は、こう考える人が多かったのですが、
最近は、将来のもめ事をしないようにと、
遺言書を書く人は増えています。
公証役場で作成する「公正証書遺言」の件数は、
年々増えており、
○ 1989年・・・4万0,935件
○ 2010年・・・8万1,984件と21年間で2倍以上となっています。
生前に遺言書を作って、
自分の財産についてどう分けるかを決めることは、
将来のもめ事を事前にシャットアウトする意味で、
とても大切なことです。
自分の自筆で書く「自筆証書遺言」は、
お金がまったくかからないのですが、
相続後に、本当に本人が自分で書いたのか、
相続人の間で、もめることが多いのです。
かえって、もめ事を作ることにもなってしまいます。
手数料はかかりますが、
控えが公証役場に残り、
遺言書が改ざんされる恐れがない、
「公正証書遺言」がお勧めです。
さて、遺言書を作る場合、
必ず注意しなければならないことに、
「遺留分」があります。
遺留分とは、
遺言書を作ったとしても、
最低守られる相続人の権利のことです。
たとえば、父が遺言書を作り、
相続人が、
○ 母
○ 長男
○ 次男
とします。
次男は、親に迷惑ばかり掛けて、
親の面倒を見ない、
母はすでに財産があるので、
「すべての財産を長男に引き継がせる」
こういう遺言書を作ったとします。
相続をむかえた場合、
次男には【法定相続分の1/2】の遺留分の権利があります。
次男の法定相続分は、
1/2(子ども全員分)×1/2(2人の子ども各人分)= 1/4ですから、
次男の遺留分は、
1/4(法定相続分)×1/2 = 1/8
となります。
8,000万円の財産なら、
1,000万円が遺留分になります。
この遺留分については、
相続が起こったあとで、
次男は長男から取り戻す権利があります。
その権利を行使するかしないかは、
次男の自由です。
最近は、権利意識が高まっていますので、
権利を行使するケースが増えています。
よって、いくら親不孝な子どもがいたとしても、
この遺留分については、
分けるような遺言書を作ったほうが無難なのです。
それでも、
「あいつには財産を分けたくないんだ」
こういう親御さんには、
いくつか対策があります。
まず、その子どもに、
「遺留分の放棄」をしてもらうことです。
遺留分の放棄とは、
自分の遺留分を、生前に放棄することです。
次男が遺留分の放棄をしてくれれば、
「長男にすべての財産を相続させる」
この遺言書を作っておけば、
まったくもめる心配はありません。
その手続きは、
家庭裁判所に本人から申請することになります。
ただし、
これはあくまでも本人の意志ですので、
親子関係がもともとうまく行っていないなら、
まず難しいでしょう。
次に「減殺順序の指定」をしておくことがあります。
遺留分を行使することを、
法律用語で、
「遺留分の減殺請求(げんさいせいきゅう)」といいます。
これを次男から行われた場合は、長男は従うしかないのですが、
減殺の順番は、遺言書で決めることができます。
よって、あまり重要性がない財産から、
順に決めると良いでしょう。
たとえば、
遠隔地の土地とか、
あまり収入がないアパートなどです。
また、
「生命保険」をうまく利用することも手です。
長男を受け取りのみの生命保険に加入しておき、
次男は受け取りとしないことです。
生命保険は、その受取人の固有の財産となり、
遺留分の対象とはなりません。
ただし、財産のなかで生命保険の割合が多い場合は、
遺留分の対象となってしまいます。
過去の判例を見ると、
生命保険金が財産の半分以上を占める場合は、
遺留分の対象となっているケースがあります。
財産のバランスを考えて、
生命保険金の金額を決める必要があります。
さらに、
「養子縁組」を組むことも有効です。
これは長男の子どもの1人を養子とすれば、
次男の法定相続分は、
1/4から1/6に減りますので、
遺留分も、
1/8から1/12に減ります。
最後に、
遺言書に「付言事項」を加えることも、
良い方法です。
付言事項とは、
財産をどう分けるかとは別に、
自分の思いをつづる文章です。
たとえば、
「○○には、親としてできる限りのことをしてきたつもりだが、
親の面倒をほとんど見ることをしてくれなかった。
今回は財産はすべて△△に引き継がせるが、
今後はお母さんの面倒を少しは見るようにしてほしい」
などと自由に思いをつづることができます。
これによる法的な強制力は一切ありませんが、
自分の思いを残すことができます。
このように、
遺留分に対してはいくつか対策はあるものの、
その権利は強いので、
遺言書は、遺留分に十分注意して作成することが大切です。
○○さんが子どもの立場なら、
親孝行をしっかりして、
今回の次男のようにならないように、
気をつけてくださいね。
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落合会計事務所
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