103万円の壁、税収減と回収の試算(2024年11月28日)
2024年11月29日
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●落合会計事務所 オフィシャルメールマガジン
vol.566 2024年11月28日配信●
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・ご挨拶……… 久しぶりの配信になります
・特集………… 103万円の壁を引き上げるとこうなります
●ご挨拶○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。
○○さん、こんにちは。
税理士の落合孝裕です。
久しぶりの配信になります。
本来の業務が1月からずっと忙しく、
本当に久しぶりとなりました。
元気で生きています(笑)。
急に寒くなりましたね。
体に気を付けて年末を乗り切りましょう!
●特集○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。
さて、今回は「103万円の壁、税収減と回収の試算」です。
年末の税制改正の大きな目玉が、
「103万円の壁」の引上げとなっています。
あらためて103万円の壁とは、
個人の所得税、住民税の計算をするときに、
○ 基礎控除・・・48万円
○ 給与所得控除・・・55万円
合計103万円までは税金がかからない、
最低限のラインを「壁」といいます。
この壁が長い間変更されなかったので、
「最低賃金」が上昇している割合に比例して、
178万円まで引き上げようという議論です。
当初は主張する国民民主党が押していましたが、
計ったようなタイミングでのスキャンダル報道で、
与党が押し戻しつつの攻防が続いています。
「最低賃金」が毎年上がっていますので、
パートやアルバイトの時給は上昇傾向です。
○ アルバイトの年収が103万円を超えると、
親が扶養控除を受けることができなくなる。
○ パートの年収が130万円を超えると、
従業員50人以下の中小企業なら、
国民健康保険・国民年金の加入義務が生じる。
これらの理由でパートやアルバイトは、
年末近くで出勤調整をして年収を抑える、
会社は人手不足で業務が回らなくなっていまう。。。
この負の連鎖を断ち切るためには、
壁は一気に引き上げたほうが良いですね。
103万円から178万円に変更になれば、
パートやアルバイトの出勤調整の解消だけでなく、
すべてのビジネスパーソンにとって、
税金対象額が75万円少なくなります。
掛ける税率分の手取りが増えることになります。
国民の手取りの増加は、
そのまま税収減となってしまうため、
「とにかくけしからん」というのが、
政府や財務省の主張となっているようです。
政府の試算によれば、
税収の減少は、所得税と住民税合わせて、
7兆6,000億円にもなるとのこと。
「これでは地方財政はやっていけない。。。」
県知事や市長からは反対の声が上がっています。
税収の減少額は、実際のところどうなのか?
公表されているデータをもとに、
以下、試算をしてみました。
(落合会計事務所調べ)
○ 給与所得・・・5兆8,300億円
○ 事業所得・・・・・・・2,600億円
○ 不動産所得・・・・・1,300億円
○ 雑所得・・・・・・・・・3,500億円
○ その他・・・・・・・・・・・・・900億円
○ 合 計・・・・・6兆6,600億円
上記の内訳は、以下のとおりです。
○ 所得税・・・・・3兆0,300億円
○ 住民税・・・・・3兆6,300億円
政府の計算とおおむね一致しました。
政府の方が約1兆円多いのは、
これまで扶養控除から外れていた人が、
新たに扶養控除の適用がされるなど、
玉突きでの税収減が理由と推察されます。
7兆6,000億円の税収減の計算根拠を、
政府はぜひ発表してほしいものです。
仮に、政府の発表のとおり、
7兆6千億円の税収減があったとして、
個人側はその分の手取りが増えます。
「家族で美味しいものを食べに行こう!」
「せっかくなので温泉に行こう!」
「子どもへの仕送りを増やそう!」
「プレゼントを買って親孝行をしよう!」
「がまんしていたあれも買っちゃおう!」
「この際まとめて使っちゃえ!」
だれもが消費を増やしますよね。
消費が増えれば、国と地方の収入も増えます。
○ 10%の消費税
○ 会社の売上が増えて法人税等
○ 給料も増えて所得税・住民税に社会保険料
会社の売上が増えれば、
○ 仕入や経費が増えます。
○ 支払先の会社の売上も増えます。
○ 消費税、法人税等、所得税等、社会保険料
これらの増加につながります。
給料が増えれば、
○ 社会保険料と所得税の負担が増えます。
○ 手取が増えるので消費も増えます。
さらに、消費が増えれば、
○ 10%の消費税
○ 会社の売上が増えて法人税等
○ 給料も増えて所得税・住民税に社会保険料
と経済の好循環が永遠と続きます。。。
手取りが増えたらどんどん消費すれば、
お金が国中をぐるぐる回って
国と地方は税金と社会保険料の収入で、
かなり回収できることがわかります。
実際にどれくらいの金額になるのでしょう?
以下の前提で試算をしてみました。
(落合会計事務所調べ)
【個人】
給料額面を100%として、
○ 社会保険料・・・15%
○ 所得税等・・・・・20%
○ 消費・・・・・・・・・55%
○ 貯蓄・・・・・・・・・10%
【会社】
売上を100%として、
○ 人件費・・・・・・・40%
○ 社会保険料・・・・・6%
(= 人件費の15%)
○ 仕入・経費・・・49%
○ 法人税等・・・・・・・2%
○ 内部留保・・・・・・・3%
7兆6,000億円の税収減に対して、
税金と社会保険料の増加は以下となります。
○ 消費税・・・・・・・・・・6,200億円
○ 法人税等・・・・・・・・4,300億円
○ 所得税等・・・・1兆7,200億円
ここまで税収増で2兆7,700億円
○ 社会保険料・・2兆5,700億円
さらに総合計では5兆3,400億円となります。
国と地方から見ると、
○ 7兆6,000億円の税収減に対して、
○ 5兆3,400億円の回収となります。
税収減の70%が回収できるのです。
「ええいこの際ぜんぶまとめて使っちゃえ!」
仮に国民が手取り増をすべて消費に回せば、
国と地方で税収減の89%が回収できます。
これなら地方の財源不足の心配ご無用です。
「減税分の多くが貯蓄に回るのでは。。。」
たしかに将来が不安なら貯蓄は増えていきます。
でも、将来の不安をなくすのが政治の役目でしょう。
○ 国民は、手取り増を気持ち良く消費をして、
○ 国と地方は、税金と社会保険で回収をして、
お互い幸せな関係になることでしょう。
年末の税制改正に向けて、
スキャンダルはひとまず置いておいて、
103万円から178万円へ、
まずは壁を高くすることに、
政治家の皆さんには尽力してほしいところです。
●編集後記○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。
いよいよあと1ヶ月ちょっと大みそかですね。
年末年始は9連休の会社が多くなりそうです。
インフル、コロナ、マイコプラズマなど流行っています。
まずは、手洗い、うがいを徹底して、
元気に年末を乗り切って行きましょう。
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