役員退職金が否認された事例(2010年11月30日)
2010年11月30日
2010年11月30日
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○○さん、こんにちは。
税理士の落合孝裕です。
最近は少しずつ寒くなってきましたね。
手洗いうがいを職場でも徹底して、
ノロウィルスなどにかからないようにしましょう。
さて、第10回目のメルマガになります。
今回は、役員の退職金に関する税金の取扱いです。
役員が退職した場合、通常、多額の退職金が支払われます。
創業者や奥様が退職すると、数千万円~数億円になることもあります。
税務調査が入ると、役員への退職金については、
かなり突っ込んで確認を求められます。
○○さんの会社では、今後、役員退職金を支払う予定はありませんか?
役員に支払った2億8,810万円の死亡退職金の支払いについて、
国税不服審判所で、納税者が全面的に負けた事例があります。
(平成13年11月13日採決)
以下、概要です。医療法人の院長が8月に死亡し、
それに伴い、法人が翌年遺族に退職金を支払うことになりました。
○ 決算期・・・・・3月31日
○ 支払額・・・・・退職金 2億7,100万円、弔慰金 1,710万円
????? 合 計 2億8,810万円
○ 経理方法・・・3月末に未払金計上
○ 支払日・・・・・6月10日
ここで問題になったのは、支払額の多さではありません。
退職金の債務が、いつ確定したかという時期の問題です。
この医療法人では、臨時社員総会(株式会社の臨時株主総会に相当)を、
決算日後の5月8日に開催し、退職金の支給の明細を承認可決しました。
法人税の通達には、役員退職金を経費にできる時期について、
次のいずれかと定められています。
○ 株主総会の決議により、その額が具体的に確定した日
○ 退職金を支払った日に経費処理をしたときは、その日
前者が原則ですが、後者でもかまいません。
税務署は、臨時社員総会を開いたのが、決算日の後なので、
3月末に未払金で経費として計上することは認められない、
経費として計上すべきは、翌期である、
という考えで、「更正処分」をしました。
これにより、
○ 所得金額の増加 2億3,675万円
○ 納税額の増加 本税 7,031万円
過少申告加算税 1,053万円
合計 → 8,084万円となりました。
納税者は、この処分を不服として、国税不服審判所で争いました。
3月末において、すでに退職金の支払義務と金額は確定しており、
翌期5月8日の総会では、それを形式的に確認したという主張です。
結局のところ、国税不服審判所では、税務署側の処分が全面的に認められ、
8,084万円の納税には変わりはありませんでした。
顧問先の会社で、最近同じような事例がありました。
(細かい点は守秘義務により変えています)創業30年の会社が、
創業時からの役員である代表者の奥様に
3,000万円の退職金を支払いました。
3月決算法人で、臨時株主総会を3月25日に開催し、
退職金の支給額、支給時期を確定し、未払金で計上しました。
2ヶ月後の5月20日に退職金を全額支払いました。
奥様は、登記上も3月末で取締役を退任しました。
その後、税務調査が入りましたが、役員退職金はもとより、
他の修正事項もまったくなく、税務調査の終了後に、
問題なしのお墨付きに、「是認通知書」までもらいました。
決算期末までに総会を開催するという、たったそれだけのことで、
税務署からはまったく問題視されませんでした。
先の否認された医療法人の例でも、
総会を3月末までに開催することは、できたはずです。
それを、税務の取扱いをあまりに安易に考えて(または知らないで)
翌期の初めに開催したことが、命取りになりました。
また、株主総会当日の取締役のスケジュールは、
念のために再確認しておく必要があります。
形式的に議事録を作成しているだけで、
総会の当日は出張の場合、総会に出席できるはずがないと、
税務調査で否認されることがあります。
○○さんの会社では、こういった誤りをしないように注意してください。
役員への退職金を支給する場合には、退任する決算期末までに、
株主総会の開催を必ずおこなってくださいね。
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落合会計事務所
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